SparVeX賞受賞者・樋野葵さんインタビュー

「好き」を恐れずにカタチにする、コンポストと微生物研究の未来



【樋野葵さん】
東京農工大学工学部生命工学科二年。幼いころからコンポストに興味をもち、研究活動に励んできた。学生アイデアファクトリーは2025年に、「コンポストを核とした地域循環の探究ー持続可能な交流モデルを目指してー」というテーマで参加。ファイナリストとしてSparVeX賞を授与されました。
学生アイデアファクトリー参加から約一年が経とうとしている今、研究はどう深まり、生活はどう変わったのか。今回樋野さんに、私たちSparVeXがインタビューを行いました。


【取材・制作】
現地取材:成田桃子(一期生、2023年度参加)、齋藤伸悟(二期生、2024年度参加)
オンライン取材協力:上村あおい、今藤彩佳、坊田裕磨(二期生、2024年度参加)
*いずれもSparVeX:学生アイデアファクトリーAlumni組織


目次

1. 下北沢での微生物電池との出会い ――科学への好奇心が研究へと変わるまで

SparVeX:はじめに、コンポストの研究をやろうと思ったきっかけを教えていただけますか?

樋野さん:コンポストに興味を持ったのは高校二年生の時の学校の授業でした。その時は「環境に興味がある⼈がプラスアルファでやるもの」というイメージだったのですが、それを⼩学⽣などに向けて作ることで、環境学習の要素を取り入れたいと思ったことが、研究を始めるきっかけになりました。ただ、科学や⽣物に興味を持っていたのはもっと前で、研究施設の多いつくば市に住んでいたため、夏休みに⼀般公開へ遊びに⾏く機会が多くありました。


SparVeX:なるほど。幼少期からの科学への好奇⼼が、⾼校の授業でコンポストと結びついたんですね。そこから、自主研究をしてみようと思った決定的な理由はなんですか?

樋野さん:私⾃⾝の興味が⼀番⼤きいです。いろんな⼈が気軽にコンポストを始めるきっかけを作りたいと思って始めました。その後、大学進学にかけて下北沢に住み始め、シモキタ園藝部の存在を知りました。実際に、団体の方々と関わらせてもらう機会があり、その方々が、「微⽣物電池」を⾒せてくださったんです。⽣物が電気を作って、実際にライトが光っているのを⾒てすごく感動したことが今の研究のもとになっています。


SparVeX:「⽣物が電気を作る」というのは聞いただけで⾯⽩いですし、⼦供たちも興味を持ちそうですね。あまり聞き馴染みがないのですが、普通の電池と⽐較した時の特徴は何かありますか?

樋野さん:微⽣物電池は電⼒が⼩さいことが⼤きな問題で、ほとんど使われていないのが現状です。私の研究ではそこを改良したいと考えています。微生物電池は普通の電池と⽐べて環境に良く、ミミズや微⽣物のはたらきが、最終的に私たちの⾷べ物につながっているという、学びの要素を感じられることに魅⼒を感じています。理科で習う普通の乾電池も⾯⽩いですが、⾃然環境でも同じようなことが起きていると伝えられると、より素晴らしい教材になると思っています。


SparVeX:微生物電池は単なる発電にとどまらず、環境の循環サイクルそのものを学べる点に⼤きな価値があるんですね。


2. 学生アイデアファクトリーでの仲間との出会い――「やってみたい」を行動に変える挑戦

SparVeX:学生アイデアファクトリーに実際に参加してみてどうでしたか?また、他の参加者には絶対に負けないご⾃⾝の強みは何だと思いますか?

樋野さん:「コンポストが好き」、「微⽣物が好き」という気持ちは絶対に誰にも負けないと思っています。頭の中で構想していてもなかなか⼀歩が踏み出せなかったのですが、学生アイデアファクトリーが動き出すきっかけになりました。アドバイスをもらったり、同じ興味分野の同期と⼀緒に進捗報告し合ったりして、協⼒し合えたことが⾃分の中ですごく良い経験になりました。


SparVeX:ファイナルプレゼンテーションでは、⾮常に楽しそうにお話しされていたのが印象的でした。大きな会場での発表はどうでしたか?

樋野さん:あんな⽴派な会場で⼀⼈で話すので、⼼臓がドキドキしていました。でも最前列に同期がいて、それを⾒て安⼼しました。せっかく夏から頑張ってきて、私の⼤好きなコンポストや微⽣物について知ってもらえる機会だったので、「⾃分の好きをみんなに伝えたい」という思いで発表しました。


SparVeX: 好きだという思いが伝わってくる素晴らしいプレゼンでした。プログラム全体を通して、⼀番の思い出と⼤変だったことは何ですか?

樋野さん:一番の思い出はサマーキャンプです。科学系や⽂学系など分野はバラバラでも、みんな⾃分の分野にすごく興味を持っていて面白かったです。最初はアイデアだけで⼊ったのでちょっと無理かもと思っていたのですが、「アイデアをスタートにしていいんだ」と思えて、実際にやったらできたという成功体験が⼼に残っています。⼤変だったのは、コンポストを全部分解させるのに一週間以上かかったりして、短期間で何度も実験できないことでした。それでも「好きだ」という思いと、学生アイデアファクトリーが終わった後も続けていくと決めていたので乗り越えられました。



SparVeX:好きだからこそ頑張れる反⾯、結果が出ない時は苦しかったと思います。モチベーションの保ち⽅に⼯夫はありましたか?

樋野さん:調べるのは確かに難しかったです。私の場合は「コンポスト」と「微⽣物」の2つの軸があったので、コンポストの実験でデータが出なくて失敗したり嫌になった時は、微⽣物の⽅に集中するというように、いい意味での逃げ道を作ってバランスを取っていました。


SparVeX: 2つの軸を持つことでうまく切り替えていたんですね。ちなみに、今回は姉妹(双子)で参加されていましたが、だからこそ良かった点や難しかった点はありましたか?

樋野さん:良かったことは、ポスター作りで一緒にビデオ通話しながらアドバイスをもらえたことです。私が化学系、妹が⽣物系なので、本を貸してもらったり⽣物のアイデアをもらえたりしました。


SparVeX:お互いに協⼒しつつ、良きライバルとして⾼め合える素敵な関係ですね!

3.「面白い」の種をまく――「好き」から広がる環境研究の可能性

SparVeX:学生アイデアファクトリーが終わった後、ご⾃⾝のプロジェクトや気持ちにどのような変化がありましたか?

樋野さん:まずプロジェクトの⾯では、協⼒先が増えました。参加したことが経歴になって「⼀緒にやろう」と話しかけてもらうことが増えました。プロジェクトの内容についても、学生アイデアファクトリーに向けて企画書のように一回全部まとめられたので、プレゼンがしやすくなりました。気持ちの⾯では、世⽥⾕や下北沢の地域の⼈たちに協⼒していただく中で、責任感が⽣まれました。いろんな⼈に話しかける「⼀歩を踏み出す勇気」が成功体験になって、どんどんやってみようという⾃信がつきました。


SparVeX: イベントへの参加が⼤きな転機となり、具体的な⾏動⼒に結びついたのですね。地域の⽅々とはどのように連携しているのですか?

樋野さん:シモキタ園藝部という団体があり、コンポストがあったり、野菜を販売したりしています。また、下北カレッジの屋上の畑でアドバイスをもらいながら、⼀緒に畑を作っています。私が微⽣物をやりたいと⾔った時も⼈をつなげてくれて、⼀緒に大きなコンポストを作りました。⼤きいコンポストって中に⼿を⼊れると60 ℃くらいまで温度が上がっていてすごく温かいんですよ。これを全部微⽣物がやっているんだと思うと感動して、どんどん興味を持つようになりました。


SparVeX:60度まで上がるんですね!全部微⽣物の働きだと思うと本当に驚きです。現在はどのような研究を進められているのでしょうか?

樋野さん:現在は、とあるプログラムでメンターに教えていただきながら、外来種について研究しています。外来種問題を解決するという⼤きな⽬標をもち、ただ駆除するのではなく「駆除後の外来種を利⽤する」というテーマで行っています。具体的には、植物から抽出した薬を私たちが使うことで、駆除の促進を⽬標にしています。


SparVeX:駆除して終わりではなく、薬として活⽤して循環させるという発想が素晴らしいです。樋野さんが⽬指している今後の社会への貢献や展望を教えてください。

樋野さん:将来的には、いろいろな発電の形があればいいなと思っています。⽕⼒や⽔⼒が使えなくなった時の一つの⽅法として「微⽣物電池」があればいいなと。直近ではイベントでワークショップを開き、⼦供たちに⾃然の⾯⽩さを知ってもらうきっかけを作りたいです。


4. 迷っているなら恐れずに!「やってよかった」しかない最高の選択

SparVeX:最後に、応募を迷っている学生にメッセージをお願いします。

樋野さん:参加を迷っている⼈には「絶対にやったほうがいい」と伝えたいです。私も迷っていたんですけど、悩む必要はなかったなと思うぐらい、得るものが大きかったです。研究の進め⽅もわかるし、仲のいい同期もできるし、その後に確実につながります。得るものが本当に⼤きいので、ぜひお勧めしたいです。


SparVeX: まさに「迷う必要はない」ですね!本⽇はとても前向きでワクワクするお話をありがとうございました!

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短時間ではありましたが、インタビューを通して樋野さんのコンポスト、微生物への愛を感じることができました。化学分野を出発点としながら、分野横断的な実践を日々続けている樋野さんの熱い思いが、より社会に広がっていくことをSparVeX一同願っています。

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【記事制作・編集】
一期生:成田桃子、吉田楓
二期生:齋藤伸悟、上村あおい、今藤彩佳、坊田裕磨、坂田樹紀
*いずれもSparVeX(学生アイデアファクトリーAlumni組織)

※本記事の取材・制作にあたっては、学生アイデアファクトリー実行委員の皆様にもご協力いただきました。

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